大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(ネ)932号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事実)

訴外山田啓は昭和十九年七月一日、振出人東京都日本橋区本町四丁目四番地鶴見重工業株式会社專務取締役山田啓名義にてその他の要件を具備した小切手一通を被控訴人(原告)に振出交付し、被控訴人は翌日これを支払銀行に呈示したが支払拒絶せられた。控訴会社(被告)は昭和十五年九月二十一日商号株式会社鶴見鉄工所、本店の所在地横浜市鶴見区鶴見町千百九十二番地として設立せられ、その後昭和十七年二月八日鶴見重工業株式会社と、昭和十九年六月十五日山崎造船鉄工株式会社と、昭和二十年九月一日山崎産業株式会社と、昭和二十四年十月二十五日山崎重工業株式会社と、順次商号を変更して現在に至つた。被控訴人はこの控訴会社に対し前示小切手金の償還請求の訴を提起した。控訴会社は右山田啓の小切手振出は控訴会社を代表して振出されたものでないことを理由として争つた。原審被控訴人勝訴。

(判斷)

控訴棄却。判示の要点左の通り。

一、本件小切手振出当時控訴会社の商号は山崎造船鉄工株式会社であつて、鶴見重工業株式会社ではなく、また本店も小切手記載の場所になかつたことは明かである。然しその当時鶴見重工業株式会社なる商号を有する会社が他に存したことを認めるに足りる証拠のない以上、右小切手振出人の名称は控訴会社の旧商号を記載したものであつて、控訴会社を表示したものに外ならないものと解するのが相当である。

二、前記山田啓は本件小切手振出当時謂わゆる平取締役で專務取締役ではなく、当時会社を代表すべき取締役は訴外山崎德松であつた。從つて山田には会社を代表する権限なきに拘らずほしいままに專務取締役の名称を使用したものと謂わざるをえない。商法二百六十二条の規定は株式会社が取締役に対し社長、專務取締役等会社を代表するものと認められるような名称を附することを許容した場合会社が責任を負うべき旨を定めたもので、本件では会社が山田に專務取締役の名称を使用することを許容した事実は認められないから右規定によつて控訴会社に責任を負わせることはできない。

三、訴外山田は本件小切手振出当時控訴会社振出の約手を行使し台灣銀行東京支店より金融を受ける権限を控訴会社から与えられていた。さすれば右山田は少くとも控訴会社を代理して台灣銀行東京支店より金融を受くる権限があつたものと謂うべきであるから、本件小切手の振出はその代理権限を超えてなした行為に過ぎず、しかも被控訴人は同訴外人が右小切手を振出す権限がありと信じ且つこれを信ずるについて正当の事由があると認定できるから控訴会社は民法第百十条の規定によつて本件小切手について被控訴人に対しその責を負うべきものである。

(註。右第三の説示は、訴外山田は本件小切手を振出すにつき控訴會社を代表すべき權限がなかつたとしても、與えられた代表權を超えてなした行爲であるとの被控訴人の主張に對し下されたもの。)

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